2001年4月から始まった家電リサイクル法。家電製品を使った人、売った人、作った人の責任を明確にし、クリーンな循環型社会を作るためにできた法律で、今までほとんど埋め立てられていた廃家電(冷蔵庫、テレビ、洗濯機、エアコン)を再資源化しようというものだ。
私の家の冷蔵庫が壊れたことをきっかけに、リサイクル法実施前の2001年2月に、自治体の粗大ゴミ処理工場を訪ねてみた。まだ使えそうな冷蔵庫も他のゴミと一緒につぶされているのを見て、とてももったいないと思った。ごく一部の金属部分は回収されているが、それ以外の埋は立て処分され、その量は年間60万tと多く、埋立処分場の寿命は一般廃棄物ではあと10年程度しかないので大きな問題となっているという。(東京新聞2001.1.21より)
2001年4月からは家電リサイクル法が始まった。今度は廃棄された冷蔵庫はどんな仕組みで処理されていくのかを知りたくなり、三菱電機が運営するハイパーサイクルシステムズを訪問した。先の自治体の処理作業場と比べ、こちらは大型機械が並び、まさに処理工場。運び込まれる家電が予想以上に多いので、処理作業はほぼ夜を徹して行われていた。
家電リサイクル法では、冷蔵庫の場合50%の再商品化率を義務付けられている為、プラスチックなども新たに資源化されて、埋め立てられる量はかなり減るとのことだった。廃家電品は手作業でフロン抜き取りやモーター部がはずされた後、機械で細かく粉砕され、樹脂や金属に分けられる。家電品には様々な材料が使われているので、廃家電を再資源化するための分別には、かなりのエネルギーが必要とされる。再生材料が価値あるものになるのはなかなか難しい様子だった。
私は、自治体やーパーサイクルシステムズリサイクルでの廃家電の処理現場を見て、できるだけ長く使ってゴミをださないことの必要性の方をより強く感じるようになった。その為には大事に使い、修理することも大切だ。主婦50人に意識調査をしたところ、家電品を修理して長く使いたいと思っている人は6割いるにもかかわらず、実際修理している人は2割弱と少ない。この背景には、修理より買い替えを勧める販売方法や修理費用が高いなどの問題がある。(商品科学研究所資料より)
家電リサイクル法によって埋め立てられるゴミの減少や、修理しやすい体制が整うこと、家電のデザインがリサイクルしやすいものになることなどが期待されるが、不法投棄の増加も問題となっている。私はこの研究を通して、リサイクルの必要性と共に、もっと環境問題を知ってもらう場を作り、環境に良い行動を当たり前にできる人が増えていく社会にならなければならないと思った。
まとめ
一般廃棄物処理場の寿命はあと10年と限界が見え始め、ここ最近循環型社会を目指す法律が次々に施行されはじめた。私の家の24年間使っていた冷蔵庫が壊れたことをきっかけに家電リサイクル法施行前の船橋市が委託している廃棄物処理業者大谷商事を訪れた。そして循環型社会に向けての法律のひとつである家電リサイクル法に興味を持ち、調べはじめた。ちょうど2001年4月に施行されたので両方の処理を見ることができた。
施行前は、運ばれた廃家電は屋根のないところに山積みされた後、手分解→フロン抜き取り→金属部分の分別の後、様々なゴミと一緒に破砕され焼却処分され、残渣は埋め立てられていた。しかし、自治体では他に色々なゴミの処理に追われており、これ以上細かに分別するのは難しいと思った。
家電には有価資源は含まれているが、分解するのに手間がかかる割に量が少なく採算があわないのでほとんどは埋め立てられている状態だった。しかし埋立地や資源が少なくなっていることから2001年4月、家電リサイクル法が始まった。家電リサイクル法では作った人、売った人、使った人の責任が明確にされている。ユーザーは処理費用を負担しリサイクルのルートに引き渡す。販売店は回収しメーカーに引き渡し、メーカーがリサイクルする。メーカーにリサイクル義務が発生したことにより、リサイクルする際のコスト削減や排出者の料金負担の軽減をはかる必要から、リサイクルしやすい物作りが促進されることや、ユーザーは捨てる時に費用がかかることから修理をする人が増え、現在6・7年の平均使用年数が延びることが期待できる。
施行後の様子を三菱電機のハイパーサイクルシステムズに行って見せてもらった。関東各地から運び込まれてくるため24時間に近い稼動状態だった。また、リサイクルを考えられていない廃家電が運び込まれてくる為、分解するのに時間がかかり、プラスチックの種類も多様で価値のある状態にするのはかなり大変そうだった。現在はプラスチックはサーマルリサイクルしかされていないが、この大変な処理状態はフィードバックされ新しい商品に生かされていけば、何年後には再資源として新たな商品に生まれ変われるようになる。メーカーに課されている再製品化率は50%〜60%であるから、少なくとも年間60万トンという廃家電の埋め立て量が激減するはずであるからかなり良い傾向だと思った。
ヨーロッパ、アジアでも家電リサイクル法は始まっていて、日本と比べてドイツ、オランダ、台湾は対象とする範囲が広いことが分かった。日本もこれから広げていく必要があると思った。日本の法律はジャパンモデルと言われるほど優れたものとして評価されているようだが、それを理解して行動する人をもっと増やして意識を高める必要があると思った。
主婦50人に意識調査をしたところ、不法投棄を心配している人は多く、実際に目撃した人も57%もいた。実際不法投棄が増加した自治体は56.4%でその心配は現実のものになっている。しかしゴミ排出者としての責任を理解してもらい町内会ぐるみで協力体制を作ればある程度は解決できるとのことだった(経済産業省半仁田さんより)
家電リサイクル法によって減るゴミというのは全体からすると0.14%にすぎないけれど(家電製品のリサイクル100の知識p76)Sustainable Societyに向けての第一歩として、とても意味のあるものだと思う。しかし不法投棄の問題から思うのは、この法律の意味や必要性がまだ十分に理解されておらず、人々の意識が法律に追いついていないということだ。この法律をきっかけに物を大切に修理してできるだけ長く使うことや、ごみをなるべく出さないように買うときによく考えて、環境にやさしい行動をする人が増えることを期待したいのだが、家電リサイクル法施行後の新聞などには、不法投棄が増えたことはよく報道されるが、今までゴミとされていた物が再び資源となる様子など良い点はあまりアピールされていない。それを見た人は「この法律ができたから不法投棄が増えてしまうのだ」と思ってしまうかもしれない。もっと人々の心を環境にやさしい行動をする方へ動かすような伝え方が必要だと思った。また、そのような行動が当たり前となるように小さな頃からの生活での習慣づけや、教育の必要性を感じた。そのためにもっとゴミ処理の現場を見てもらったり環境のことを伝えたり話し合ったりする場が身近に必要だと思った。
提案
普通に暮らしているとなかなか環境のことを考える時間がない。もっと環境に対しての理解を深めたり話し合う必要があると思った。そこでエココンサート会場をリサイクルプラントの屋上で定期的に開催することを提案する。来た人はリサイクルの様子など説明を受けたり実際にリサイクルの様子を見てから会場に行く。そこではコンサートと共に曲と曲の間で環境意識を一人でも多くの人が高めてくれるような話をしていく。そしてコンサートの後でコミュニケーションをとれるようイギリスのパブのような軽い食事や飲み物が楽しめるようにする。そこでは使い捨ては禁止だし、飲み物はデポジットのものを使う。楽しみながら環境に対して考えてもらい、一人でも多くの人に環境にやさしい行動をとってもらいたいのでこのような場が身近な場所にあれば良いと思った。月に一回でも行えばリサイクルプラントはもっと身近なものになるし、リサイクルの大変さも分かってもらえると思う。
イメージ図